「食べ過ぎですよ。軽い運動をしてください。」
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と言われても、不快な症状は続いているのであの医者は(ヤブ)と
決めつけて納得の答えが出るまで次々と病院を変えて歩き周り、
ついに病院サーファーになってしまいました。
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ふと、歳のせいかと諦めたいのですが、宣告できない謎の大病か
と思い悩み続けています。
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これはスマホで得られる多量な医学情報の影響かもしれません。
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私のような病気好きに最適なサービスが始まりました。
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それは自身の余命をリアルタイムでスマホに知らせる物でした。
飛行機を利用するとマイルが貯まり一定量のマイルに達すると
運賃値引のサービスは昔からありました。
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他にも会員券にスタンプが貯まると値引きしてくれました
それがスマホでポイントが着けやすくなり、顧客の抱え込み
に使われています。
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商品や買い物で貯まるポイントは楽しみだし、ポイントが貯まる
と貰える物や買い物に使えるお得なサービスが蔓延しています。
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そこでポイントを見るのが癖になり暇だとスマホで取出して
チェックしています。
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さて、余命ポイントにはどんな特典がつくのだろうか。
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余命サービスセンターに個人情報を登録すると、すぐに平均
余命の連絡が来ました。
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まだ少しの間はこの世で暮らせそうなポイント数で安心してい
ましたが、いつものように病院に行った時、余命ポイントが気に
なりスマホを開くと。昨日のポイント数より減っているのだ。
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大した減り方でなく診察を受け薬をもらい車で帰宅しました。
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寝る前にポイントを見ると増えているだろうか、と期待しま
したが、朝方に見たポイント数はさらに減っています。
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心配になり眠気は消えて隠れた病かと朝まで考え続けました。
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スマホを見るとポイント数の他に細かな注意書きがあります。
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今日の行動に従ってチェック項目が出て、細かなポイントが
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出るようですが空欄のままです。
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ポイント表示の下を読むと。
『余命ポイントセンターにご登録ありがとうございました。
初めて登録された方は平均余命ポイントが付加されます。
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このポイントはあなたの余命の保証ではありません。
これからも十分注意してお過ごしください。』
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『よろしければ、(確認ボタン)を押してください。』
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さらに表示には
『(確認ボタン)を6時間以内に操作しないと再度余命
ポイントサービスの契約ができません。』
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とかなり強引な勧誘です。
不安を抱えたまま、(確認ボタン)を押すと。
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朝食から始まり、病院までの往復運転、医師の診断、薬の効果
などが細かくポイントとして現れました。
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試しに朝食の項目をクリックすると食事時間、食材、咀嚼回数
や、食事量などからポイントが出る仕組みのようです。
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日々の活動が余命に影響しているのだろうかと半信半疑でした。
運転の項目では運転速度、時間、運転コースとハンドル操作、
視線を検知して、さらに渋滞や車の前後左右の状況と安全確認に
加えて、移動時の沿線状態までチェックしているようです。
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確かに最近の車にはドライブレコーダーがついたり、居眠りを
検知して休息を促したりしてます。
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余命センターでは車の移動をナビと連動させて現在地を知り、
事故や地震の際には近接の建物から危険物の落下があるかなどを
予測してくれているようです。
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安全運転を心がけ、危険な場所を避けて走れるとポイントの
影響は少ないと知りました。
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まさかテレビを見ているとポイントの変化があるのだろうか。
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相手をど突いて無理やり笑いを誘う場面を見ると不快な感情が
湧き、ポイントは下がります。
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名人の噺で腹の底から笑えた時はポイントアップしています。
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見る人によって受け方は異なるでしょうから、どう検出がされて
いるのでしょう。
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呼吸数、脈拍や笑い顔などを検出しているのでしょうか。
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この契約者の反応でポイントに反映しているのでしょう。
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芸人はビックデータを利用してこれからは本物の笑いを追求し
芸を磨くことに期待しましょう。
余命ポイントセンターで定期検診の申込みができるようになり
ました。
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血液や尿から健康状態を見つけ出す従来の方法から歯科検診と
認知検査などが加わり、総合的に診断して予防するプログラム
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が組み込まれています。
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わずかな不調で病院を訪れていたのが減り、検査センター
では今までより精密なデータが得られるようになりました。
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心配する結果でなければ余命ポイントがアップされます。
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ポイントが急激に下がった場合は適切な治療ができる病院が紹介
され病室の予約までしてくれます。
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余命ポイントの利用でいつ頃に臨終を迎えるのか知ることがで
きるので、これをビジネスに利用したい業者が現れ余命センター
ではビックデータだけに限定して公開することになりました。
それでも葬儀やお墓の宣伝ばかりが目立つようです。
余命ポイントセンターの契約を理解できないのは家内でした。
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病院通いが始まったのはずっと前で、家内は私が頻繁に出かけ
るので浮気かと疑ったようです。
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長い間、連れ添って病院好きと気がついてくれたようです。
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体の少しの変化を敏感に捉えて病院に出かけ安心して帰宅しては
また新たな不調を探し出します。
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これが病院に行く日課なのにうろうろと家にいないで助かる程度
に思ったり、深刻な病かもと心配してくれているらしいですが、
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余命ポイントを知ると。
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「そんな気味の悪いことはやめてよ。」と始めは嫌っていた
家内でしたが、私が不調の時は心配してポイントを覗き見して
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安心できたので家内も契約しました。
余命ポイントセンターと契約すると常時監視されます。
これを嫌った人たちからポイント廃止運動が起きて来ました。
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だがその人たちは激しい雨が降るとハザードマップを広げては
我先に逃げ出したのです。
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命を失うのは誰でも嫌で自分だけは助かりたいのですね。
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そんな人たちを対象に余命ポイントに変わるスマホのアプリが
発売されました。
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それはセンターに頼らないで余命を知る方法で車ならドラレコ
を着け、スマホの天気情報でルートを決めたり、地震の時は震度
速報を見て親族の住む地区を知る方法で従来と同じですが、
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これを連結させて余命値が出せるシステムのようです。
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その後システムに追加する様々なオプション機能が販売され
余命値の精度が向上しました。
安全運転が広まり交通事故は減り、ポイントが変わらない少し
の不調では病院に行かない人が増えて、病院は本当の病気治療に
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専念できて平均余命は増加して来ました。
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また殺人や強盗などの凶悪事件はポイントが大幅にダウンする
ので、事件は徐々に減りました。
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もちろん余命ポイントが世界中で使われると戦争はなくなり
平和になって来ました。
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ポイントに影響する危ないことはなくなり、世界中が穏やかに
なりました。
大きな課題は心が停止してポイントに影響してしまう現象です。
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近親者やペットとの別離は辛く長引き、時には自殺に追い込んで
最悪な結果になるのを防ぐ手立てです。
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この時は余命ポイントは低下して、動くことや食事をことすら
できなくなります。
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体力は下がり気分は死の世界に向かってしまうのです。
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余命ポイントセンターはこの人を救う秘策がありました。
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対象者の心を動かすためにその人に適した提案がされます。
例えば、旅行好きなら旅のガイド情報を届けたり、宿の予約を
してくれます。
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ゲーム好きなら新しいゲームをスマホに送りゲームに熱中
させます。
わずかになった余命をどのように受け止めて最期を迎えるか。
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リアルタイムで余命を知るとますます不安が高まり、ポイントの
減りが急になります。
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そこで数日前か数ヶ月前まで余命ポイントを知らせない機能を
選択ができるようです。
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いつも監視されていたポイント社会から孤独な世界にゆく準備
期間が待っているのです。
いよいよ余命ポイントが残りわずかになりその時を迎えること
になりました。
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ベットに横になると余命ポイントセンターからスマホに音声が
流れて来ました。
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「長い間ご利用いただきまして、ありがとうございました。
いよいよこの時が来ましたね。」
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最後の力を振り絞りスマホを操作すると、わずかだけ数値は
上昇しましたが、すぐにゼロに近づきます。
「静かに出発の時期を迎えてください。これからはポイントを
気にしない世界になります。さあ胸に手を置いて全身の力を
抜いて、深く息を吸い込んでください。
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そしてゆっくり吐き出し終わるとお別れです。」
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もう欲しいものは何もない、と悟り。
ただ「フー」と息を抜きました。
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あれ、スマホがない。
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