第15話 忘れもの


 忘れ物をしたようだ。

中身がわずかしか残っていない古い財布だ。

 公園のベンチだったか、電車のシートだったか。思い出せないから忘れ物になった。

 思い出の詰まった財布だから探したい。

帰りがけに忘れものセンターに寄った。

 「すいません。」と声をかけたが何の返事もなかった。

 もう一人、センターに入って来た。

 「すいませんが。」と小声で呼んでいる。

今度は大声になり「すいません。すいません。」

 「あのう、誰もいないようですね。私は財布を探していますが、

  あなたはなにを。」

 「ここで働いていたようですが。忘れてしまいまして。」

 



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by;colow.81