第31話 猫の呪い『誰が殺した』


 愛猫のミイちゃんは殺されたようです。犯人はわかりませんが両隣に住む石原さんと村井さんが共謀して毒の入った餌を与えたのではないでしょうか。と疑い始めました。

 

それは以前のことですが、

「お宅の猫の声がうるさい。」

と石原さんが家に苦情を言いに来たことがあります。また村井さんは庭に置いた盆栽が倒されたのはお宅の猫のせいだと大声を立ててきたこともあります。

 

 事件の数日後、隣の村井さんと石原さんが急に親しく話しかけて来ました。

「佐藤さん、お宅で猫の被害がありませんでした。うちでは大事な鉢植えが壊されて大騒ぎですよ。」

「うちは猫アレルギーが酷くて近くにいるだけでクシャミが出るのですよ。嫌ですね。」

「最近、猫の声はしないし、この辺では猫の姿がありませんよ。」

 何か気にかかる話です。もしかして二人が毒入りの餌を蒔いたのだろうか。と思い、

「野良猫が増えているらしいですね。どうしたらいいのですか。」と質問すると

「捕まえて去勢手術をすれば増えないらしいですよ。でも手術代が高いし、猫は捕まえられないですね。」

「餌をやらないのも効果があると聞いていますね。」

「百合を生けた水を飲むと猫は即死するらしいですよ。」

なんとなく(ミイちゃん)の声がして「この人たちが殺した。悔しい。」と囁きが聞こえました。

 その時から大事なミイちゃんを殺された恨みを晴らしたいと思うようになりました。

 

 どうすればミイちゃんの仇ができるのか、と考え続けました。

飼い猫の恨みで人を殺すことはできませんが、私と同じ苦しみを与えれば心が休まると思いました。

 

 スマホで(藁人形、呪い)を調べました。それには、

この御神木に呪いたい相手の名前を書いた藁人形を丑の刻に白衣姿で頭に3本のローソクを灯して5寸釘で打ち付けて、これを毎夜7日間呪い続けると満願の日に呪いは通じて相手は死ぬと伝えられています。とありました。

 藁人形による呪いの程度はわかりませんが、ただ、ミイちゃんのために人を殺すまでの恨みはありませんでした。

 近くのホームセンターで細い荒縄と藁束、5寸釘と金槌を購入しました。それにヘッドランプも用意しました。

 藁人形を扱うのにふさわしい山をネットで調べました。低い山で頂上付近に神社がある山はすぐに見つかりました。

 また、山の麓にキャンプ場があるとわかり、小型テントを用意して、それを使えば車で往復するより楽になります。

 初日は頂上までの山道を調べ、藁人形と打ち込む木を見つけました。そして夜に登っても山道は安全であると確かめました。

 それに登山と下山に必要な時間を測りました。

そして、昼間はテントで藁人形を作り、休憩を取り夜中に山に登って呪いの儀式をすることにしました。

 藁人形は長さ20センチに切り揃えた、藁を用意して一握りほどに丸めて縛り、両腕としました。次に30センチほどに切った藁で頭部と胴体に見立て丸めて、両腕の真ん中に通して、胴体と両腕を固定しました。次に両足の部分は胴体部を二つに分けて丸めて縛り、藁人形ができました。木に打ち付ける場所は胴体の中心部分にしてそこに名前を書いた札を打ち付けるようにしました。

 1日目は予定通りにヘッドランプをつけて山を登り、深夜2時ごろに目標の巨樹に到着して人目につかない場所に用意した藁人形を打ち付けました。

 「ミイちゃんの仇」と唱えて打ち付けました。(カーン)と静かな山に釘を打ち付ける音が響ました。

 「ミイちゃんの仇」と唱えてもう一度釘を(カーン)と打ち込みました。

 最後の一振りはさらに心を込めて「ミイちゃんの仇」と祈りながら釘を打ち込みました。

 これを4日間、山を登り降りして呪い続けました。そして隣の村井さんと石原さん夫婦への呪いは終わりましたが、あと、3日間祈り続けて、満願を迎えなければなりません。

 5日目の時でした。

向かい側の山肌に灯りが見えました。3人が登山中だと感じました。こちらを見ているようでしたが、すぐに消えました。

 もしかすると見られたのだろうか、そうだとすると今まで苦労した呪いが消えてしまう。

 誰だかわからないがあの山の灯りの持ち主も邪魔をした仇と思い呪いました。ただミイちゃんの仇でなかったので「呪いが叶いますように。」と唱えました。

 

 もちろん、呪いの行の時もミイちゃんといつも一緒で、お骨の入った壺は片時も離しませんでした。

 

 7日間の呪いの行を終えるとテントはそのままにして、ミイちゃんと暮らせる(猫の島)へ車で移動しました。そこで今までの出来事は忘れてのんびり暮らすことになりました。

つづく



by;colow.82