第27話 ドングリ革命


麓の町から狭い舗装道路を登って行くと集落がありました。

 でも集落は数件を残し空き家です。屋根が落ちて草が住み付いています。

残された人は家の周りで細々と畑を作っています。それも毎日のように来る鹿や猪の被害を電気柵で防いでいますが、すぐに壊されてしまいます。

 もう高齢だし、とこの冬には長年住み慣れたこの土地から離れていきます。

  

奥まった山間部に住む人は絶えて田畑は荒れてしまいました

 草が茂り、潅木が生えています。長い間、人々は木に覆われた原野を切り開き、木の株や岩を取り除いて開拓し、稲を実らせ、美味しい野菜を作り生活を支えていましたが、人は去り荒れ地に戻ってしまいました。楽しい会話が漏れていた民家は朽ち果てたままです。

ここを整理して食料を作る計画です。

 

山の動物たちです。

 嫌われの代表だった大型動物のクマ、シカそれとイノシシが中心です。

 今まではニンゲンが作ったものを横取りして食べていましたが、数が増えすぎ餌を探しに住宅地に現れると捕獲されて山に返される例が増えてきました。

 罠にかかるとか、ハンターに駆除されて命を落とすこともあります。

鹿さんです。

 「私が荒れた田畑の草木を食べます。」

猪からは

 「私のできることは田畑を耕すことです。」

熊さんからは

 「自分は力があるだけで何か役に立つことはありますか。」

鹿さんから

 「熊さんも草木を食べられるでしょう。一緒に食べませんか。」

 「体が大きいので何でも食べますよ。冬眠に備えての秋は栗とかドングリや

  クルミなどと食べますが、昔は沢山あったドングリの木は植林でなくなり

  ました。今は使わないで放置した山が沢山あります。 

  秋はドングリの木が減っているのに、これが不作で実らない時は里で餌探

  しします。春になると採れる柔らかい草の根やタケノコを食べます。」  

 「鹿さんはどんなものを食べるのですか。」

 「熊さんと同じものを食べています。1頭が1日に4kgは食べています。

  熊さんは3倍以上ではないですか。でも私たちの数は全国で330万頭で

  す。熊さんの150倍近くの頭数ですからすごい量ですね。

  皆さんと同じように最近は餌が少なくなり、木の樹皮を食べて木を枯らし

  てしまいこれが原因で崖が崩れてこれで私たちが嫌われているのです。」

 「猪さんは私たちとは違う食べ物ではないですか。」 

 「皆さんと同様に餌がなくなってきます。それと冬が暖かくなって冬眠する

  ことを忘れています。背が小さいから雪が降るとじっとしていましたが

  最近は雪が少なくて餌探しに動き回っていますよ。  

  全国の仲間は約120万頭です。鹿さん半分ですね。

  土を掘り起こして採れる根とか茎とかでタケノコは大好きです。」

 

 「放置されて荒れ地にドングリの木を植えませんか。」

熊さんからの発案です。

 「それはいいですね。荒れ地だとドングリは育ちますか。」

 「ドングリは乾燥すると芽が出なくなりますから、拾ったらすぐに土に埋め

  たいですね。」

と猪さんから発言です。

 「ドングリを植えてからドングリが成るまで何年かかりますか。

  熊さんはご存知ですか。」

 「そうですね三年ぐらいで実ったのを見たことがありますが、その前に土に

  埋めた実が掘り出されたり、芽が出ても食べられたりしていますよ。」

 「それは困りますね。誰かの見張りが必要ですね。」

 「私は大きいのであまり動き回れないですから見張り役をしますよ。」

と熊さんから話が出ました。

 「それは助かります。では荒れ地の草木は私たちと猪さんが担当します。

  ところで植えるドングリですが誰が探して、運んでくれますか。」

 「ドングリを拾い集めるのはリスさんが得意ですね。私からリスさんにお願

  いしましょう。」

再び熊さんから発言がありました。

 「山奥に荒れ地はたくさんあります。それにそこに住むほとんどが食料に困

  っています。

このドングリ化計画を皆さんに知らせる方法はありますか。」

 「鹿さんにお願いできませんか。遠くまで届く声をお持ちなのでどうでしょ

  うか鹿さん。」

 「やらせてください。」と鹿さんは喜んで答えました。

 「それから今後のことなのですが山奥の荒れ地は沢山あるようですが、もっ

  とドングリを増やす必要があると思いますが、いかがでしょうか。」

 「昔はドングリ山だったのが杉などを植林されたままで放置された荒れ山が

  あります。ここもドングリ化計画ができないでしょうか。」

と猪さんから意見が出ました。

 「荒れ地と違って草木を食べる方法ではできませんね。何か良い方法があり

  ますか。」

 「植林で放置された杉などを熊さんの力で押し倒せますか。」

 「それは無理ですが、猪さんが根元を掘り起こしてたらできそうですね。」

 「猪さんはどうですか。」

 「そうですね。杉の根は浅いのですぐに掘り出せますよ。」

 「鹿さんに樹皮を剥いてもらえば樹木は枯れますか。」

 「大木は無理ですが意外と早く枯れますね。そうすれば軽くなるので倒せる

  と思いますがどうでしょうか。」

 「枯れても根っこがあるので猪さんの協力が必要です。」

 「それでは鹿さんが木を枯らし、その後に猪さんが根っこをほじり出して、

  熊さんがその木を押し倒して、開けた場所にドングリを埋めましょう。」

 「木が生えていた場所は栄養分が少ないので枯葉を埋めたいですね。これは

  皆さんでやりましょう。」

 

動物たちのドングリ計画がスタートしました。

 いよいよ荒れ地の草を皆なで食べようとしましたがもう秋です、草は硬くなり食べられません。でも一生懸命に草を引きちぎっています。

 熊さんたちは灌木に挑戦しています。

 猪さんは得意の牙で土を掘り起こしています。

 リスさんたちは近くの山からドングリを集めてきました。

 遠くの山へはリスさんを背中に乗せて鹿さんが運びます。

 鹿さんたちは落ち葉を集めてきました。

さすがの広い荒れ地から草や灌木がなくなりました。

 暫くすると雪に変わるような冷たい雨が降ってきました。

鹿さんが歩いたヒズメの後にリスさんたちが頬に貯めたドングリを急いで置いています。

 落ち葉を被せています。

ドングリたちは温かい春になると芽を出すでしょう。

 

 その日から荒れ地を見渡せるところに熊がいました。近くに冬眠用の岩穴がありました。

 冬眠中でも時々目覚めて監視する覚悟です。

 

 



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by;colow.81