暗くなるころに。
「こちらは警察署です。迷い人のお知らせをします。XXの住まいの
YYさんが朝から家を出たまま、まだ帰っておりません。お心当た
りの方は警察署にご連絡くだい。」
「YYさんの特徴は年齢が70歳、身長168センチ、白髪混じりで
痩せ型、灰色のジャージを着ています。」
連日夕方になると迷い人の緊急放送が流れます。
家族の方は心配で警察署に捜索願いをしたのでしょう。
これを聞いていた老夫婦は。
「トーさんより年下ね。昨日の人は見つかったのでしょうね。」
「まだ若いじゃあないか。」
「年に関係ないですよ。気をつけてね。」
「だけど、なんで服装がわかるんだろうね。いないと気がついて
から家にある服を調べて連絡したのかなあ。」
「いつも同じものばかり着ているトーさんとは違うのかも。」
「そうか、これから外出するときは写真を写せば間違いなく探して
くれるかな。」
「スマホを持ち歩いていれば位置情報でどこにいるかわかるけど、
スマホを忘れたら同じじゃあない。」
「首からスマホをぶら下げて外出しようか。」
「それより、ドラレコをバッチにしたらどうかしら。
ドラレコってさあ。車が動いているときに画像を記録する装置で
しょう。あれを小さくして高齢者に着けるのよ。」
「いつも監視されるのか。俺はやだなあ。」
「あらあ、浮気現場が丸見えになるからなの、トーさんはお年だか
ら心配ないでしょう。」