第34話 猫の呪い『山神山』


 調べて行くと火事による指なしの死体と、堆肥の中でミミズによる窒息死が偶然だが佐藤家を挟んだ両側だった。しかも同じ日の事件だ。

 

 これを怪奇事件して取り上げたのは一紙だけだった。

警察の発表に何か共通点がないのか、見つけて調査することにした。

まず、ネズミによる事件ではネズミの姿を誰も見つけていない。

 ネズミ駆除業者を探したが彼らは依頼されて殺鼠剤を撒き、ネズミの侵入口を塞いだだけで、ネズミは見たことがなかったようだ。

 次にミミズについて調べたが、耳鼻科の治療で耳からミミズを取り出したことだけで、他はマスコミが騒いだ内容以外を知ることはできなかった。

 しかしなぜ同じ日に不可解な死亡事件が起きたかだ。

これが疑問になり近所で佐藤さんについて聞き取りを行うと、

 「佐藤さんですか、数年前に夫がなくなり、その後に猫を飼い始めたそうです。大層そのネコを可愛がっていましたよ。」

 「あの猫がいなくなってすぐどこかの山へ行ったそうですが、その後はわかりません。」

 「どこの山かご存知ですか。」

 「さあー、息子は山登りが好きだから何か知っているかもしれません。」

帰宅を待って、

 「あの山だと思いますが、友人と先日登っているときに妙な現象を見ましたがそれが何かはわかりません。まさか今話題になっているオカルト現象と関係があるのですか。」

 「妙な現象とはなんですか、よかったら話を聞かせてください。」

 「次の休みに友人たちとその山に行って確かめる予定ですけど、ご一緒しますか。」

 「高い山は苦手ですが、低い山でしたら是非連れて行ってください。ご迷惑はかけません。」

 

 今日もいつもの3人連れです。それに担当記者が加わり麓までドライブです。

途中で顔なじみのキャンプ場に寄りました。

 「おじさん久しぶり、何な変わったことありました。この間からマスコミの話題になっていることだけどオカルト現象がこの山で起きていないか確かめに連れの記者さんと登るんです。」

 「あるよ、この数日間貼りっぱなしのテントがあるけど、気味が悪くて放置したままでいるんだ。」

 「誰がテント場を借りているかわかりますか。」

 「ちょっと待ってくれ。貸出簿に付けているから。佐藤さんという女の方で、山で何かを探すので10日間ほど借りたいと記録にあります。」

 「あれから10日を過ぎたのですが、山で迷ったのか心配しているところです。」

 「テントを調べさせていただきますか。」

 「ちょっと奥の方ですが、いい機会ですのでご一緒します。」

受付をアルバイトに任せて案内してくれました

 木立の多いテントサイトで、最近は人気があって予約が取れない時があるそうです。

 

 「すいません。管理人ですが入ってもいいですか。」と声をかけて閉じられているテントを開けると人の気配とか、テント生活の備品は何もありません。

 テントの床に藁クズが散らばっています。

 「テントで寝泊まりした気配がありませんね。」

代わるがわるにテント内部を確かめました。

 「チェックインの時は大きなザックを持っていましたが、テントを置いたままで

行方不明では困りますよ。利用料金は前払いでですからいいのですがね。」

 

 山神山に登る人は少なくて登山路は草が生い茂っている路ですが、踏み跡が付いていて最近登った人がいたようです。

「異常な事件ですが、もしかするとの藁人形の呪いではないでしょうか。」と記者が話し出しました。

「丑の刻(午前1時から午前3時ごろ)に神社の御神木に憎い相手に見立てた藁人形を釘で打ち付けます。

連夜この詣でを行い、七日目で満願となると呪う相手が死ぬが、この行為を他人に見られると効力が失せると信じられています。」

「この道を登ったのは間違い無く佐藤さんでしょう。」

それほど急な登りもなく全員が小さな祠のある頂上に到着しました。

「すいませんがみんなで周辺を探してくれますか。もし異常なものを見つけたらそのままにして近づかないで下さい。」と記者さんが指示しました。

「巨樹の根元に藁人形が打ち付けてあります。」

「手を触れないで下さい。」

 みんなが巨樹の周りに集まりました。巨樹には7体の藁人形が釘で打ち付けれられていました。それぞれの藁人形には名前を書いた札に釘が刺さっています。村井さん夫妻と石原さん夫妻の名前です。他の3体には名前が書かれていない札が刺さっています。

その場にいた全員が背筋に寒気を感じたのです。

「もしかすると名前の書かれていないのは君たちのことかもしれませんね。」

 

 村井夫婦は窒息死で石原夫婦は焼け死にました。4人とも同じ日に山神山で藁人形に呪いを掛けた7日目です。しかも死に方が異常で、村井さんはミミズに殺され、石原さんはネズミに殺されたのです。

 

 

 「藁人形はそのままにして置きましょう。片付けると何かの祟りがあると聴いています。また、今見たことは他言しないで下さい。藁人形の祟りが広がるとそれを真似る人が増えて危険な世の中に変わる可能性が考えられます。」

 

暗い気持ちのまま山神山を下りました。

「今日山頂であれを見つけたから厄払いに皆で飲みませんか。」と管理人から誘いがありました。

 

 

「今日は飲んだし、今晩はここでキャンプして明日、帰ったらどうだ。テントはあるし。記者さんはこの小屋で泊まって行きなさいな。」

「そうしましょう。皆いいだろう。」

 つづく