第03話 井戸掘り


 「まだ井戸を掘り続けるのですか。」
 「深く掘れば美味し水が出てくるからみんな頑張ってくれ。」
 「あの横穴が見つかりましたが、どうしましょうか。」

 「横穴は知ってるが、水が沢山出るかわかんないだろう。この

  井戸は昔掘り当てた所だから大切にしなきゃあダメだよ。」

 
それからもみんなで井戸掘りは続けたが、ある時。

 「これ以上深くすると掘った土を上げることはできません。」

と訴えた。

 「土を上げる道具を作って効率を上がるなら手配しなさい。」

 
 穴は深くなり、周辺から崩れ始めてきました。
ついに崩落事故が起きてしまいました。
 「君が行って謝ってくれないか。君の仕事だろう。」

 嫌々だが重役の席が待っている。報酬も上がるので嬉し笑いを

消して神妙な顔で記者会見場に向かいました。

 

 「うちだけが苦しいのか、よその井戸はどうなっているのか、

  報告してくれたまえ。」

 「隣の井戸も苦しんで、穴を小さくして井戸掘りの人数を減ら

  して耐えています。」

 「井戸に限界が来て、遠い国の水を買っている所もあります。」
 
それでも耐えていましたが。気になり出して、
 「あの横穴はどうなったんだ。」

 「すごい水が大量に出るようです。彼らは外国の人たちで、

  それも大勢のグループです。」

 「水以外も出て来ています。」

 「掘り当てた場所がいいんだろうな。うちの力じゃどう

  しょうもないよ。水が枯れるまで無駄を省いて続けたまえ。」

 あの時に横穴を掘っていればこんなことにならなかったのに、

と思う力も失せてしましました。

 

 穴を掘る道具は改良されて危険な現場での掘り出し作業は全て

機械任せになりましたが、どんどん機械は高価になります。

 だが、すでに機械を買い換える力はなって来ました。それに

加えて。

 なんで井戸を掘っているのか知らない人たちが増えて、疑問

視する人もいました。

 「まだ井戸堀をやるんですか。」
前にも聞いた話だ。あの時の私の発言と全く同じだ。

 横穴が見つかれば今度は挑戦できるのにと思うが失敗すれば

素晴らしい老後が消滅する。

 冒険はやめようと決めて。
 「横穴は知ってるが・・。」と発言してしまった。


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by;colow.81