第35話 猫の呪い『ヤマビルの攻撃』


 テントに潜りしばらくするとパラパラと雨の音です。

「変だなー、さっきまで星が見えていたのに雨に変わったのかな。」

「山の天気は変わりやすいなあ。寝るよー。」

灯りを消して寝袋に潜り込んだ。

雨の音は止んだようだ。

夜中になり妙な夢で目を覚ました。

 顔にびっしりとヤマビルが食いついている。

「うわー。」と叫んで飛び起きた。ランプを灯した。

他の二人はぐっすり寝込んでいるようだ。

スマホの画面を鏡の代わりにして恐る恐る顔を写した。

コロコロに膨らんだヤマビルがオデコに2匹と左の頬に3匹、右の頬に4匹ぶら下がっている。

痛みはない。

 慌ててヤマビルを振り落とそうとしたが、ヒルは皮膚に食い込んでいて簡単には取れない

無理やり取ると食いちぎったところは出血が止まらなくなる。

 血で腹一杯になるとコロリと体から離れますが、出血は止まりません。

 

 寝ている二人を起こした。

「起きてくれよ。大変だ。助けてくれ。」

びっくりして飛び起きた二人は顔を見て更に驚いた。ヤマビルが丸くなって顔にぶら下がっているのだ。

 「おい、どうした。その顔はヒルだらけじゃあないか。外に出てやられたのか。」

 「違うよ、取ってくれ。なんか薬でヒルが剥がれることを聞いていたが今持っているかい。」

「虫よけのスプレーをかけると剥がれるよ。やってみようか。」

 スプレーをかけるとヤマビルはコロコロを落ちたが傷口から出血している。

「痛いけど我慢しろ。」と噛まれた傷口に親指の爪を当てて、毒を押し出した。

 絆創膏で止血した。

顔にベタベタと絆創膏を貼り付け、鼻と口と目だけになってしまった。

痛みはない。

慌ててヤマビルを振り落とそうとしたが、ヒルは皮膚に食い込んでいて簡単には取れない

無理やり取ると食いちぎったところは出血が止まらなくなる。

血で腹一杯になるとコロリと体から離れますが、出血は止まりません。

 

 絆創膏で止血した。

顔にベタベタと絆創膏を貼り付け、鼻と口と目だけになってしまった。

 ヤマビルは湿気を好みますのでハイカーやキャンパーなどは草が茂った場所や木の株と岩に腰を下ろさないように気をつけた、事前にズボンや服に虫除けスプレーや忌避剤を塗ることが重要です。

 登山路や草むらでズボンの裾などに吸盤部分が触れると一気にズボンを登ってきて衣類の隙間に入り、皮膚に食らいつき。吸血する厄介な代物です。

 湿り気の多い登山路では特にヤマビルの攻撃に備えて、ズボンの裾に粘着テープを巻いて、裾から靴の中に入るのを防がないと靴の中に入り込んで吸血して靴の中が血で真っ赤になりますから気をつけましょう。それと足元から這い上がって、数分で首か顔面から吸血する場合があります。またザックを地面に置くとそれにヤマビルがぶら下がり、ザックを背負うと首を狙って移動します。

 昨夜、雨音がしたが、あれは誰かがテントにヤマビルを投げつけたのだろうか。

テントはヤマビルの入る隙間はないはずだが

 

 顔が腫れて痒みが酷くめまいがしてきた。B君の運転で記者と一緒に山を下り病院へ。

C君は先日登った隣の中妻山に登ることにしました。

 

途中、記者さんと山神山について

「君たちは山神山で知っていることがあったら教えてくれるかな。」

 「山神山は低いので昨日登ったのが初めてですよ。

10日ほど前に皆で日の出を見ることにして隣の中妻山に登った時のことですが、夜中の2時ごろでした、山神山に小さな明かりを見つけたのです。3人ともヘッドランプを消してそれを見ていると『コーン、コーン。コーン』と山神山の方から音がしてきました。夜に鳴く、鳥とか、獣でないことはすぐに分かりました。不思議な音でした。その時でしたガサガサと木の葉の擦れる音がして地面が揺れてきました。あれー地震かな。と感じました。」

A君は「あの音は藁人形を木に打ち付けた音だったのだな。なんとなく気持ち悪い時間だったけど、すぐに中妻山を登りました。山頂で綺麗な朝日を見てそのことは忘れてしまいました。」

「ヤマビルと藁人形との関係に心当たりはありますか。」

「まさかあの時に僕たちが見ていたとは気がつかないでしょうが、こちらのヘッドライトを見つけて3人が居たことはわかったかもしれません。」

 

 「もしかすると君たちが見た山神山の灯火がそれだったのではないでしょうか。そして見られたので効力がなくなるのではないかと3人にも呪いをかけて、その一つがヤマビルの攻撃だったのではないでしょうか。」

 「だとすると君とC君も呪われているのですね。」

「相手を殺すほどの呪いではなかったのでしょう。それと誰が呪いの邪魔をしたかわからないでしょう。今日、山神山で初めて行ったのが君たちだとわかったのでしょう。あれから10日経っているので殺される心配は薄らいだと思いますが、恨みは消えないでいるでしょうからこれからは十分気をつけてください。」

 

「山登りするのでヤマビルには気をつけていましたが、まさかテントの中で食われたのは初めてです。」

「テントの底が破れていてそこから侵入したのでしょうかね。それとも初めからテントの中に住み付いていたのでしょうかね。」

いくつも食われているA君の顔を見て医者も不思議になって。

「これはひどいですね。消毒しますけど、感染症が出るかもしれませんよ。数日間は入院してください。」

「顔以外にやられた場所があるか診察します。下着を脱いでください。」

下着を剥いで確かめると下着に血がついていた。

「首と胸もやられていますね。」

 

 ベッドに横になると昨夜のことが思い出された。

今夜もヤマビルが襲ってくるのではと病室の周囲に注意を向けてなかなか眠れない状態が続いた。

 「まさか、あの時に見た山神山の小さな光が藁人形の呪いをしていた時なのだろうか。そしてあの時のことが呪いでヤマビルが襲ってきたのか。登山で一番嫌いなヤマビルにやられるならもう登山は諦めようと。」心に誓った。

 つづく